レプトスピラ症は犬も人も要注意! 予防と初期症状の見分け方

「レプトスピラ症」という病名を聞いたことはありますか?
これは、犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症のひとつです。
水や土を介してうつるこの病気は、日本でも夏〜秋にかけて発生が報告されており、決して他人事ではありません。
今回は、レプトスピラ症の症状や感染経路、予防策、見分け方についてご紹介します。
レプトスピラ症は人にも伝染る細菌感染症
レプトスピラ症は、レプトスピラ属という細菌による感染症です。
らせん状をしたこの菌は、ネズミなどの保菌動物の尿に含まれて自然環境中に広がります。
感染経路として多いのは、次のような状況です。
- 水たまりや泥水に触れた
- 河川敷や池などで遊んだ
- 雨の日の散歩後に体を舐めた
皮膚に傷があったり、口や目の粘膜から菌が侵入することで感染します。
犬では以下のような症状がみられることがあります。
- 発熱
- 元気・食欲の低下
- 嘔吐・下痢
- 多飲多尿または無尿
- 黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)
- 筋肉痛や腹痛
- 呼吸が速い、咳や血痰
重症化すると腎不全や肝不全を起こすだけでなく、肺に出血が起こるタイプ(致死的) も存在します。
またこの病気は、人にも感染することが特徴です。
飼い主や家族が感染するケースもあるため、飼い主の健康リスクも考慮が必要です。
日本では沖縄や九州などでの報告が多いですが、本州の都市部でも散発的に発生しています。
特に梅雨時や豪雨後は要注意です。
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レプトスピラ症の感染を防ぐには
レプトスピラ症の予防には、次のような対策が有効です。
ワクチン接種
犬用のレプトスピラワクチンは初回は2回、その後は年1回の接種が基本です。
使用されるワクチンは、複数の血清型(Canicola, Icterohaemorrhagiae, Grippotyphosa, Pomonaなど)に対応しています。
ただし、日本ではHebdomadisという血清型の関与も報告されているため、かかりつけ獣医師と相談して、地域に合ったワクチンを選ぶことが重要です。
ワクチンを打っていても100%感染を防げるわけではありませんが、重症化のリスクを大きく下げる効果が期待できます。
水辺を避ける
多くの場合、犬は汚染された水や泥に触れることでレプトスピラ症に感染します。
次のような環境は特に避けましょう。
- 雨上がりの水たまり
- 河川敷のぬかるみ
- 流れのない池
- 水が溜まった用水路
川遊びやアウトドアをする機会が多い夏場は要注意です。
ネズミ対策をする
レプトスピラ菌をばらまくのは、主にネズミなどの小動物。
庭やベランダ、家の周辺にネズミが入らないよう、次のことに気をつけましょう。
- 生ゴミは密閉容器に
- ドッグフードを出しっぱなしにしない
- 建物の隙間をふさぐ
フンや尿が残っていそうな場所は、ゴム手袋を着用して掃除し、1:10に希釈した漂白剤などで消毒しましょう。
犬の尿への接触を避ける
万が一、愛犬のレプトスピラ症が疑われる場合は、尿に直接触れないようにすることが重要です。
掃除はゴム手袋と消毒液で行い、作業後はしっかり手を洗ってください。
掃除の際は、飛沫が飛ぶ可能性のある高圧洗浄機の使用はNGです。
感染した場合の症状と見分け方
家庭での判断には限界がありますが、次のような兆候が見られたら要注意です。
- 急なぐったり感、発熱
- 嘔吐や下痢
- 水を大量に飲む or まったく飲まない
- 黄疸(白目や歯ぐきが黄色い)
- 腹痛、背中を触られるのを嫌がる
- 咳、血痰、呼吸が速い
特に、数日のうちに症状が悪化するようなら、すぐに動物病院を受診しましょう。
動物病院で行う検査と診断
獣医師は、次のような検査を組み合わせて診断します。
- 血液検査(腎臓・肝臓の数値を確認)
- 尿検査(タンパク、白血球、比重の異常など)
- PCR検査(菌の遺伝子を検出)
- 抗体検査(MAT検査など)
- 超音波やレントゲンで肺や臓器の評価
PCR検査は感染初期は血液から、後期は尿から検出しやすいため、タイミングによって提出部位が異なります。
また、抗体検査は「回復期に4倍以上の上昇」で確定とされ、1回だけでは判定が難しいこともあります。
いずれにしても、疑いがあれば検査結果を待たずに治療を開始するのが基本です。
レプトスピラワクチンの正しい理解と活用法
レプトスピラワクチンは必須のワクチンではありませんが、地域や生活スタイルによっては事実上必須扱いとして接種が推奨されています。
- アウトドア活動の多い犬
- 河川敷を散歩することが多い犬
- ネズミの多い地域に住んでいる犬
こうしたケースでは年1回の定期接種を欠かさないようにしましょう。
また、ドッグランやペットホテルでは接種証明が求められる施設も増えているため、マナーのひとつとして考えることもできます。
知っていれば怖くないレプトスピラ症
レプトスピラ症は、「日本ではあまり聞かない病気」と考えている方も多いかもしれません。
しかし、実際には夏場や豪雨のあとなどに発生例が増えており、飼い主さんにとっては決して軽視できない病気です。
ただし、ワクチンと日々の予防でほとんどの場合は対策ができます。
それでも不安な症状が見られた場合は、早めに動物病院へ。
愛犬の命を守るため、ぜひ記憶の片隅にとどめてください。
- 2025.09.10