犬の狂犬病ワクチン 副反応と猶予証明の基礎知識

動物病院で触診される犬の画像

日本で犬を飼っているすべての飼い主に義務づけられている「狂犬病予防接種」。
毎年1回の接種が法律で定められており、地域の登録や狂犬病予防注射済票の交付も義務です。

しかし、「副反応が心配で接種をためらっている」という声も少なくありません。

今回は、狂犬病ワクチンにともなう副反応の実態と、接種を安全に受けるための工夫、さらには猶予制度の活用方法までを詳しく解説します。

狂犬病ウイルス感染を防ぐワクチン

狂犬病ワクチンは、犬が狂犬病ウイルスに感染するのを防ぐための不活化ワクチンです。
日本では毎年の接種が「狂犬病予防法」によって義務づけられており、違反すると罰則が科されることもあります。

なお、*狂犬病は発症すると致死率がほぼ100%*という非常に恐ろしい感染症です。
現在日本では長らく発生していませんが、海外からの侵入リスクはゼロではなく、常に警戒が求められています

狂犬病ワクチンの副反応

狂犬病ワクチンは比較的安全性の高いワクチンですが、ごくまれに副反応が出るケースがあります
日本獣医師会の調査ではつぎのとおり。

  • 1歳未満と10歳以上12歳以下に副作用が多い
  • 接種当日に副作用が発現しやすい
  • 重篤な副作用は6時間以内に発現しやすい
  • アナフィラキシー症状は副作用報告件数の約半数を占める

なお、厚生労働省の「狂犬病に関するQ&Aについて」によると、発生頻度は4,688,240頭で18頭以下、つまり約26万頭に1頭という低確率とされています。

狂犬病ワクチンのよくある副反応

狂犬病ワクチンの副反応の多くは数日で自然におさまる一過性のものです。

  • 接種部位の腫れやしこり
  • 一時的な元気消失
  • 食欲不振
  • 軽度の発熱やけいれん(ごくまれ)

犬にやや元気がなくても、1~2日で元の元気に戻るケースが大半です。

一方、重度の副反応はつぎのとおり。

  • アナフィラキシー(急性の強いアレルギー反応)
  • 嘔吐・下痢・失神
  • 呼吸困難や顔の腫れ

これらは非常にまれなケースですが、発生した場合は即時の治療が必要となります
特にアナフィラキシーは接種から30分以内に起こることが多く、接種後すぐの観察が重要です。

狂犬病ワクチンの副反応を抑えるためにできること

副反応を完全に防ぐことはできませんが、飼い主としてつぎのような工夫が可能です。

狂犬病ワクチン接種前にできる対策

まず大切なのは、犬の体調をしっかり確認することです。
少しでも元気がなかったり、下痢や咳などの症状がある場合は、接種を延期するのがベストです。

また、混合ワクチンやフィラリア予防薬との同時接種は避けることも効果的です。
複数の刺激を一度に受けることで、体にかかる負担が増えてしまいます。

そして、食後すぐの接種も避けましょう。
胃腸の調子が不安定なときにワクチンを打つと吐き気や下痢が起こる可能性があります。

狂犬病ワクチン接種後に気をつけること

接種当日はできるだけ安静に過ごさせてあげることが大切です。
散歩やシャンプーは控え、静かな室内でゆっくり過ごしましょう。

万が一の反応が起きたときのため、ワクチンの接種後は動物病院で30分ほど様子を見るのもおすすめです。

また、接種後24時間以内はこまめに様子を観察し、嘔吐や呼吸の乱れ、ぐったりした状態などがあればすぐに病院に連絡しましょう。

接種が免除される「接種猶予証明」とは?

健康状態によっては、狂犬病ワクチンを打たないという選択肢もあります。
その際に必要となるのが「接種猶予証明書」です。

つぎのようなケースでは、獣医師の判断により狂犬病ワクチンの接種猶予証明書が発行されることがあります。

  • 重度の心臓病や腎臓病など、慢性的な疾患を抱えている
  • 抗がん剤やステロイドなどの免疫抑制剤を使用中
  • 極端に高齢、または体力が著しく落ちている
  • 過去にワクチンで重度の副反応を経験したことがある

いずれも「一時的に接種できない」ことが前提であり、永続的な免除ではないことに注意してください。

接種猶予証明書の手続きと注意点

接種猶予証明書を取得した場合でも、市区町村への届け出が必要です。
また、1年ごとの更新が原則であり、体調が回復すれば翌年以降は接種が求められます。

自治体によって申請書の様式が異なることもあるため、事前に役所または獣医師に確認しておくと安心です。

狂犬病ワクチンに対する正しい理解と行動

副反応が怖いからといって、なんとなく接種を避けるのは大きなリスクです。
狂犬病は長らく日本では発生していませんが、海外からの侵入のリスクは常に存在します。

また、人間への感染を防ぐという社会的な役割があるのが狂犬病予防ワクチン。
法律によって義務化されている背景には、人と動物が安全に共生するための強い意味があります。

心配な場合は、獣医師としっかり相談しながら、愛犬にとってもっとも安全な形で接種を受けましょう。

正しい知識で狂犬病予防

狂犬病ワクチンには副反応のリスクがある一方で、接種によって守られる命があるということを忘れてはいけません。
副反応を最小限にする工夫や、接種猶予制度の正しい活用によって、より安心・安全に義務を果たすことができます。

正しい知識を持って、大切な家族である愛犬の健康と社会全体の安全を守っていきましょう。

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