狂犬病がヴァンパイア伝説の起源? 症状と怖すぎる共通点

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ヴァンパイアといえば「吸血鬼」の和名のとおり、血液をすすり眷属を増やす恐ろしい存在。 某作品では西洋妖怪のトップとして描かれるなど、世界中で圧倒的な知名度を誇る伝説のひとつです。

そしてこの伝説が、表題の病気「狂犬病」と非常に類似点が多いことはご存じですか?

今回は、そんなゾッとする ヴァンパイア伝説と狂犬病の関係 についてご紹介していきます。

ヴァンパイア伝説とは?

ヴァンパイアの伝承は、ヨーロッパを中心に中世から広く語られてきました。

特に有名なのは ルーマニアのトランシルヴァニア地方の伝承 で、かの「ドラキュラ伯爵」もこの地域の逸話が元になっているそうです。 ヴァンパイアの特徴としては、

  • 吸血
  • 夜行性
  • 日光に弱い
  • 十字架・聖水・ニンニクを嫌う
  • 鏡に映らない
  • 招かれないと家に入れない
  • オオカミやコウモリに変身する

などが知られています。

狂犬病の症状は?

まず、狂犬病がどんな病気なのかおさらいしましょう。

狂犬病はウイルス性の感染症で、ほ乳類すべてに感染する可能性があります 。 そして、発症すると致死率はほぼ100%という恐ろしい病気です。

狂犬病に感染するとつぎのような非常に特徴的な症状が現れます

  • 極度の興奮・錯乱状態
  • 水を恐れる・水を飲めない(水恐怖症)
  • 感覚過敏となり光や音、匂いに過敏に反応する
  • 噛みつき衝動
  • けいれんや筋肉の硬直
  • 異常行動
  • 幻覚症状

これだけでも恐ろしいですが、さらに 発症後に回復する例はほとんどない というのもこの病気の異常性を物語っています。

狂犬病と吸血鬼の共通点

さて、お気づきかと思いますが、ヴァンパイアと狂犬病には 驚くほど共通点 があります。

噛みつき衝動

狂犬病にかかった人や動物は、 激しい攻撃性や噛みつき行動を示すことがあります 。 これはウイルスが脳に与える影響によるものですが、まさにヴァンパイアの「吸血」を思わせる行動です。

水恐怖症

狂犬病に感染するとどれほど喉が乾いても水を飲むことが困難になり、水を見るだけでも激しい苦痛を感じる「 水恐怖症 」を発症します。 聖水 を嫌うヴァンパイアの特徴とも一致しますし、当時一般的だった 銀を使った鏡は水面に似た光沢を持っていたこと から、狂犬病の人はまるで映らないことを恐れるように近づきがたいものだったのかも知れません。

感覚過敏

狂犬病に感染すると 感覚過敏となり、光や音、匂いに敏感になる という症状があり、日光やニンニクを嫌うヴァンパイアの特徴とも合致します。

夜行性

狂犬病に感染すると錯乱や幻覚で昼夜の感覚が乱れ、 夜間に徘徊したり大声を出したりする ことがあるそう。 これもまた伝説の吸血鬼に通じるイメージです。

唾液を通じた感染

ヴァンパイアは吸血することで その症状を「感染」させます 。 狂犬病ウイルスも 唾液を介して感染する ため、こちらも共通しています。

感染経路

狂犬病の感染経路としては、99%が犬との接触と言われていますが 当時のヨーロッパでもオオカミや野犬は狂犬病を振りまく存在でした。 ヴァンパイアがオオカミに変身するという伝説もこういった背景があるのかもしれません。

医学と民間伝承の交差点

では、なぜ狂犬病という病が吸血鬼という存在の創造につながったのでしょうか?

その背景には 当時の医療知識の乏しさと、理解できない現象を「怪異」として解釈する文化的傾向 があります。

狂犬病の症状は非常に劇的で、しかも潜伏期が長く発症までに数週間〜数か月かかるという特性があります。 よく知る人が何の前触れもなく豹変してしまうその姿は、周囲の人々の目に 現実離れした不条理 として恐ろしく映ったでしょう。

そんな不条理から身を守るため、ヴァンパイアという名を生み、対策が講じられたのかもしれません。

そして、この類似性についてはなんと1998年に発表された論文でも指摘されています

Rabies: a possible explanation for the vampire legend

In the 18th century, belief in vampires--allegedly dead persons who left their graves and killed people and animals--raised great concern in the Balkans and an extensive debate in Europe. This historic phenomenon still awaits a comprehensive explanation. This article proposes that rabies may have played a key role in the development of the vampire legend, given the coincident time of the phenomena and the striking similarities between them.

狂犬病:吸血鬼伝説の考えられる説明

18世紀、バルカン半島では、吸血鬼――墓を出て人や動物を殺したとされる死者――に対する信仰が大きな関心を呼び、ヨーロッパでは広範な議論が交わされた。この歴史的な現象は、いまだに包括的な説明が待たれている。本稿では、両現象の発生時期が一致し、両者の間に顕著な類似点があることから、狂犬病が吸血鬼伝説の発展に重要な役割を果たした可能性があることを提唱する。

迷信と病の境界線

ヴァンパイア伝説と狂犬病の共通点を見ていくと 理解できないものに名前を与えることで「恐怖」と向き合おうとした 当時の人々の姿が見えてきます。

現在日本にいたって、狂犬病は医学的に解き明かされほぼ根絶された病ですが、この境地も過去の人々の知恵と勇気によってもたらされたものかも知れませんね。


本記事の着想をくださったこぉひぃ牛乳さんありがとうございました! わたしもこういう話大好きです!

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