好奇心はなぜ猫を殺すのか? ことわざのルーツと歴史と変遷

先に申し上げます。
この記事で 猫は死にません 。ことわざの話です!
センシティブな時代なので強めに申し上げます!
さて、「好奇心は猫を殺す」という少し物騒で、どこか皮肉めいたことわざを聞いたことはありますか?
この表現は、実は イギリスで生まれた 表現です。
今回は、この言葉の 意味・起源・変化の歴史 まで深堀りします。
「好奇心は猫を殺す」とは?
このことわざは、 過剰な好奇心は災いのもと という教訓として使われます。
つまり「あまり余計なことに首を突っ込みすぎると痛い目にあうかもしれない」というような警告です。
猫はとても好奇心旺盛な動物 。
袋の中をのぞこうとして外せなくなったり、高い木に登って降りれなくなったり「トムとジェリー」のトムのように危険にも率先して飛び込んでしまうところがあります。
起源をたどれば、この性格がまさに「好奇心の象徴」としてことわざに登場したようです。
原型は別の言葉「心配が猫を殺す」
現在使われるのが「好奇心は猫を殺す (Curiosity killed the cat)」。
しかし、元になったのは16世紀末のイギリス演劇、 ベン・ジョンソンの「Every Man in His Humour(1598年初演)」 に登場する「心配が猫を殺す (Care killed the cat)」というセリフです。
ここでの「care」は、心配や気をもみすぎることで、「 気にしすぎは体にも毒だよ 」というような意味の教訓句だったのです。
「心配」から「好奇心」へのシフト
この「Care killed the cat」という表現が人々の間で使われていくうちに、時代の流れとともに 「心配」は「好奇心」へと置き換えられていきました 。
最も古い「Curiosity killed the cat」の記録は、 1909年のアイルランドの新聞記事 。
そこから20世紀にかけて一気に広まり、 現代のことわざとして定着 していきました。
つまり、「好奇心は猫を殺す」という表現の誕生は1900年代ですが、その原型は300年以上も前の演劇にある ということになります。
風が吹けば桶屋が儲かる?
日本語のことわざ「風が吹けば桶屋が儲かる」は、複雑な因果関係をたどるユーモラスな表現。
一方、「好奇心は猫を殺す」には明確なストーリーは存在しません。
このことわざは、あくまで抽象的な教訓として使われてきました。
どんな状況で猫が死ぬのか、詳細は語られていません。
実は「九つの命」とも関係している?
英語圏にはもうひとつ、「 A cat has nine lives. (猫には9つの命がある) 」ということわざもあります。
これは、猫が高い所から落ちても平気だったり、危険をすり抜けるように生き延びたりする様子から生まれた表現です。
この生命力あふれる猫ですら……という逆説的なところから、より「好奇心」というものの恐ろしさが際立ちますね。
近年はポジティブな後日談(?)も
このことわざには、近年ポジティブな「続き」がつけられることもあります。 それがこちら。
"Curiosity killed the cat, but satisfaction brought it back."
(好奇心が猫を殺す。しかし、探究心を満たして生き返った)
この表現は、「リスクがあっても、知りたいという気持ちは価値がある」という、 探究心を肯定するメッセージ として使われるようになっています。
劇から生まれたことわざは時代とともに変化する
「好奇心は猫を殺す」は、いまや世界中で使われる英語圏のことわざですが、その出発点は 一つの演劇作品に登場したセリフ でした。
このことわざの歴史は、 言葉の進化と文化の広がり を体現した興味深い例なのです。
そして今なお、「知りたがりすぎるのも危険」という警鐘として、あるいは「知ることは大切だよ」という前向きなメッセージとして多くの人の心に残り続けています。
- 2025.05.19