秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる? 犬と猫にまつわる言い習わし表現

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犬や猫は古くから人の生活に寄り添ってきた動物。
そのため日々の暮らしや自然の移ろいのなかで、わたしたち人は彼らの行動を観察し、そこから教訓や風情を見いだしてきました。

そうして生まれたのが「ことわざ」や「俗信」と呼ばれる言い習わしの表現です。

今回は、その中でも少し長く、どこか詩情を感じさせる表現を中心にご紹介します。

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秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる(地方のことわざ)

冷たい秋の雨を嫌う猫の様子をたとえた言葉。
「三尺(約90センチ)」というのは、不機嫌になるほど顔が長くなるとされていた猫の特徴を誇張した表現。
つまり「猫の顔が三尺になる」とは秋の冷雨にげんなりする猫の姿を描いたものです。

猫の表情を通して、秋の寂しさや冷え込みを感じ取る日本的な感性ですね。

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猫の恋七日(ことわざ)

「猫の恋(発情期)は七日ほどで終わる」という事実に基づいたことわざ。
そこから転じて、「恋の熱も長くは続かない」という人間への教訓にもなりました。

江戸時代の川柳や俳諧では、恋愛の儚さを猫の恋に重ねた句が多く見られます。
たとえば「猫の恋 やがて人の世の 冷めやすさ」。
こちらも恋の移ろいと生命の儚さを描いた風流な表現といえるでしょう。

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猫が顔を洗えば雨が降る(俗信)

猫が前足で顔を洗うときは、雨が近いという俗信。

実際には、湿度が高くなると猫の毛がしっとりし、顔を気にして洗うため、結果的に「雨の兆し」となったそう。
つまりこの言葉も、「動物の行動に現れる気象変化」を敏感に読み取る昔の知恵のひとつです。

猫に九生あり(ことわざ)

英語の “Cats have nine lives.” に対応する表現。
「猫は九つの命を持つほどしぶとい」という意味で、俊敏さや回復力をたたえています。

そこから「どんな困難にもくじけない人」「何度でも立ち上がる者」をたとえる言葉にもなりました。
生命への敬意と再生の象徴として、世界各国で愛されることわざです。

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春の猫は七軒隣の牡を恋う(地方のことわざ)

発情期の猫の恋心をたとえた俚諺で、春になると七軒も離れた家の猫を求めるほど恋に熱中する、という意味。

そこから転じて、「恋の奔放さ、春の生命力の高まり」を表す言葉として親しまれてきました。
人の心の芽吹きを重ねて読むと、いっそう味わい深いですね。

犬が草を食えば雨が降る(俗信)

この言葉は、昔の人が犬の行動から天気を占ったことばです。
「犬が草を食べると、近いうちに雨が降る」という意味で、各地に伝わる天候の言い習わしのひとつです。

実際には、犬が草を食むのは胃の調子を整えるためであり、直接的に雨とは関係ありません。
しかし、気圧や湿度の変化が犬の体調に影響を与え、雨の前にこうした行動が見られることもあったようです。

犬の遠吠え、主の留守にする(ことわざ)

こちらは「陰でしか強く出られない人」を皮肉ることわざです。
犬は主がいるときはおとなしく、いないときに遠くで吠える。
そこから、「主の留守=権威が不在のときに威勢を張る者」という比喩になりました。

江戸時代のことわざ集にも記載があり、人間の弱さと滑稽さを見抜いた表現です。

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犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ(ことわざ)

「犬はわずかな親切にも長く感謝する」という意味で、犬の忠誠心をたたえた言葉です。
人との絆を重んじる農村文化の中で生まれたもので、小さな愛情が長い信頼を生むという教訓が込められています。

犬と猿とは仲が悪いが同じ山に住む(ことわざ)

「気が合わない者同士でも、共存せねばならない」という意味のことわざです。
犬猿の仲という言葉にもあるように、犬と猿は昔から「反りが合わない関係」の象徴でした。

しかしこの言葉には、「合わなくても暮らしていく知恵」という現実的な視点が見えます。
現代においても人間関係の教訓としても使えそうな表現です。

ことわざ・俚諺・俗信の違い

記憶の中でないまぜになってしまいそうですが、日本にはことわざ、俚諺、俗信とさまざまな言い表しの表現があります。

  • ことわざ(諺)
    • 一般的な真理や教訓を短く表した言葉
  • 俚諺(りげん)
    • 地方や庶民に伝わる生活感のあることわざ
  • 俗信
    • 科学的根拠のない経験的信仰や観察的迷信

ことわざの世界には、教訓・風情・信仰が溶け合う境界の曖昧さがあり、それがまた日本語の奥深さでもあります。

遥か昔から景色の中に存在した犬と猫

犬や猫のことわざや俗信には、単なる迷信を超えた生活の知恵と自然への好奇心が宿っています。
彼らのしぐさひとつから、季節の移ろいから社会のありようまで関連付けようとする、そんな繊細な感性が日本のことば文化を育ててきたのかもしれません。

利便性極まる現代では教訓めいたことわざもやや霞んでしまう思いですが、その中でも遥か昔から確かに存在した犬と猫を見つけて、ぜひその風景を思い浮かべてみてください。

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