モンゴルの犬たち バンカルとタイガの特徴とROF-MAO(ろふまお)が出会った平らな犬

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先日、にじさんじ所属のYouTuberグループ「ROF-MAO(ろふまお)」が行ったモンゴルロケにて、あまりに平らな「モンゴルの犬」が登場するとしてSNSで話題を集めました。
今回は、この平らすぎる「モンゴルの犬」をはじめ、あまり知られていないモンゴル原産の犬種たちをご紹介します。

ROF-MAO(ろふまお)の動画に登場した平らなモンゴルの犬

モンゴル原産の土着犬たち

モンゴル原産の犬種として国際的に確認されているのはつぎの2種類。

  • モンゴリアン・バンカル(Mongol Bankhar)
    • Wikipediaや動画内では「モンゴリアン・バンホール」とも
  • モンゴリアン・タイガ(Mongol Taiga)

いずれもFCI(国際畜犬連盟)では正式な犬種として未登録ながら、モンゴル国内の畜犬団体(MKF)がモンゴルの代表的在来犬として認定した犬種です。

これらの犬たちは、ヨーロッパのようにショー用に作出された純血種ではなく、長い年月をかけて自然淘汰と人間の選択交配によって形作られてきた土着犬(ランドレース)
そのため、私たちがよく知る犬種たちのように、厳密に「スタンダード」を定めて特定の団体が管理しているわけではないため、その外見的特徴には若干のバラつきがあります。

モンゴルの護畜犬「モンゴリアン・バンカル」

モンゴリアン・バンカルは、遊牧民が家畜をオオカミや盗難から守るための護畜犬です。
何百年も前から、草原のゲル(移動式住居)のそばで生活しながら、家畜と人間を守るという重要な役割を果たしてきました。

遊牧における護畜犬は、放牧地の中で独立して行動し、周囲の異変を察知して判断する能力を求められるため、極めて賢く、状況判断力に優れた犬として知られています。

モンゴリアン・バンカルの特徴

モンゴリアン・バンカルは、頑丈な体つきで大型犬に分類される犬種です。
ただし同じ大型護畜犬の中でも、チベタン・マスティフやコーカサス系と比べると、ややスマートに見えるかも知れません。

その他の特徴は次のとおりです。

  • 体高
    • オスで約71〜84cm、メスで約66〜74cm
  • 体重
    • オスで約39〜57kg、メスで約36〜41kg
  • 被毛
    • 厚い二重毛(ダブルコート)で、寒さと乾燥に強い
  • 毛色
    • 黒、赤褐色、黒タン、淡いフォーンなど多様。
  • 特徴的な模様として、目の上に小さな斑点がある「フォーアイ」もよく見られます
    • 中〜小の垂れ耳
    • ふさふさした巻き尾や下がり尾

顔つきは精悍ですが、性格は穏やかで忠実。
家族や家畜に対しては非常にやさしく、外敵に対してだけ強い警戒心を発揮するのが特徴です。

モンゴルの猟犬「モンゴリアン・タイガ」

モンゴリアン・タイガは、モンゴルの東部地方(ヘンティー県、ドルノド県など)の狩猟犬タイプの土着犬です。
遊牧民がキツネや野ウサギなどを狩る際に、俊足で追跡・捕獲を担ってきました。

モンゴリアン・タイガの身体的特徴

モンゴリアン・タイガは、モンゴリアン・バンカルと比べると明らかに細身で、脚の長い体型です。
猟犬のため高い機動性が重視されており、いわばモンゴル版サイトハウンドのような犬といえます。

その他の特徴は次のとおりです。

  • 被毛
    • 短毛〜中毛で、皮膚は薄め
  • 体型
    • スリムで胸がやや深く、腹部は引き締まりが強い
  • 四肢
    • 細長く、地面を蹴る力が強い
    • 立ち耳〜半垂れ耳まで個体差あり
  • 毛色
    • ベージュ、ブラウン、黒などさまざま

全体的にスプリントに向いた身体となっており、寒冷地でも走れるスタミナがあります。
短毛のわりに寒さにもある程度耐え、まさに極地の猟犬といえる存在です。

あの平らな「モンゴルの犬」はモンゴリアン・タイガ?

動画に登場した平らな犬「モンゴルの犬」は、その特徴からややシニア期のモンゴリアン・タイガだと思われます。

ただ、インターネットで「モンゴリアン・タイガ」と検索すると、一見して「モンゴルの犬」に似ても似つかない犬がヒットして混乱した方も多いのではないでしょうか。

一部憶測を交えたものになりますが、これには次のような理由があります。

土着犬であるため個体差が大きい

モンゴリアン・バンカルもモンゴリアン・タイガも、品種改良されたショータイプではなく、地域と実用目的に応じて交配されてきたため、見た目のバラつきがあります。

近年では標準化が進んではいますが、ROF-MAO(ろふまお)がモンゴルロケを行ったのはゴビ砂漠近辺
都市部と比べると多様な個体が見られる傾向にあります。

また、今後標準化が進んだモンゴリアン・タイガは恐らく平らな犬のイメージではなく、サイトハウンド特有のスタイリッシュな外見の犬になっていきそうです。

外部犬種との交雑も?

ゴビ砂漠周辺では、隣接するロシアや中国からの犬も入り乱れ自然交雑することもあり、一見するとモンゴル犬らしからぬ犬種も見られるのだとか。

ラベルの揺れ

現地において「モンゴリアン・バンカル」「モンゴリアン・タイガ」という名前は、広義に「モンゴル犬」全般を指して使われることもあり、見た目が違ってもそう呼ばれることがあります。

モンゴル犬たちの未来と保全の動き

近年、バンカルやタイガといった土着犬を守ろうという動きがモンゴル国内外で活発になっています。
特にバンカルについては、DNA研究や保護プロジェクトが進んでおり、FCI公認の犬種登録に向けた準備も始まっています。

タイガについても、モンゴル畜犬連盟(MKF)が国内犬種として認定しており、今後は国際的な認知が進むことが期待されています。

広大なモンゴルが育んだユニークな犬たち

モンゴルには、過酷な自然環境と遊牧文化の中で育まれた独自の犬たちがいます。
護畜犬の「バンカル」、狩猟犬の「タイガ」。
それぞれが異なる機能と姿を持ち、現代にもその使役犬としての役目を全うしながら生き続けています。

その多様性と背景にある文化に目を向けることで、モンゴル犬たちの本当の姿が見えてくるかもしれません。

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