犬のシアノバクテリア(藍藻)中毒に要注意。川・湖での水遊びが危険な理由

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暑い日に愛犬と一緒に川や湖で水遊び。想像するに、理想の夏の一コマです。
でもその水辺に、命にかかわる毒素をもった「バクテリア」 が潜んでいるとしたらどうでしょう。

その正体は「シアノバクテリア(藍藻)」。
見た目は美しい自然の一部でも、毒をもつ一部の藍藻が犬の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。

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繰り返される見えない危険「シアノバクテリア」への警告

近年はアメリカ・カナダ・オーストラリアでも、相次いで犬の死亡例が報告されています。
さらに、透明な水や浅瀬でも発生する新たなタイプのリスクが注目されており、英国獣医師会でも改めて飼い主に注意を呼びかけています

Lots of dogs love water and won’t hesitate to dive straight in when they see a lake or go for a paddle in a pond. But toxic blue-green algae is very difficult to identify and, if ingested, can make dogs seriously ill and can even be fatal.
We’re urging pet owners to keep their dogs on leads near water bodies where blue-green algae has been confirmed or, if unsure if a water body is safe, to keep them away from it completely as it is not worth the risk.
(意訳)
シアノバクテリアを見分けるのは非常に難しく、接種すると死に至ることもあります。
安全かどうかわからない場合、犬を川や湖、水から遠ざけるよう強く求めています。
リスクを犯す必要はありません。

https://www.bva.co.uk/news-and-blog/news-article/hot-summer-sparks-blue-green-algae-warning-from-vets/

シアノバクテリアとは

「藍藻(らんそう)」の名前には「藻」とありますが、実際の正体は光合成を行うバクテリアです。
正式には*シアノバクテリア(Cyanobacteria)*と呼ばれ、古くから自然界に存在します。

発生しやすい条件はつぎの通りです。

  • 気温が高い
  • 日当たりが良く栄養塩(リン・窒素)が豊富
  • 水の流れが少ない場所(湖・溜池・浅瀬など)

そして、一部のシアノバクテリアは、*シアノトキシン(藍藻毒)*と呼ばれる毒を出します。
主なものは以下の2種類です。

  • ミクロキスチン
    • 肝臓にダメージを与える肝毒
  • アナトキシンA
    • 神経系に作用し、呼吸や筋肉を麻痺させる神経毒

これらは人より体の小さい犬にとって、ほんの少量でも命にかかわる危険性があります。

川底にも潜む「底生マット」に注意

かつてシアノバクテリアといえば、湖の表面に広がる「アオコ」が主なイメージでした。
しかし、近年増えているのが「底生マット(benthic mats)」と呼ばれる川底の石や砂利にべったりと貼りつく藍藻です。

この場合、一見して透き通った透明な水でも、安全とは言えません。

シアノバクテリアが潜む危険な水の見分け方

基本的にすべての川や池、湖を警戒したいところですが、水辺で以下のような様子がみられた場合は絶対に犬を近づかせないようにしましょう。

  • 水面が緑のスープ状、もしくは絵の具を混ぜたような模様
  • 水際に泡状の浮遊物やゼラチン質の塊
  • 岸や石にぬめりのある黒・緑・茶色のマット
  • 水から土臭さや腐敗臭がする

一見すると透き通った清流でも、底にシート状の藍藻マットが付着していることがあります。 風下側や日差しが当たる浅瀬、岸辺の溜まりに注意が必要です。

「飲まなければ大丈夫」は間違い

犬は水を飲まなくても、泳いだ後に体や足を舐めてしまいます
これだけで、体に付着した藍藻が口から取り込まれてしまいます。

そのため、水遊びをした後は必ず次のようにしましょう。

  1. すぐに真水で全身を洗う
  2. 肉球の間、口元、腹部など細かい場所まで洗い流す
  3. 吸水タオルでしっかり拭き取り、舐めさせない

シアノバクテリア中毒の症状

毒素を含むシアノバクテリアを摂取してしまうと、症状は数分〜数時間で出るのが特徴です。

つぎのような症状が見られたらすぐに動物病院へ連絡してください。

  • 嘔吐、下痢、血便
  • よだれを垂らす、けいれん
  • ふらつき、虚脱、呼吸困難
  • 食欲不振、黄疸、震え

ミクロキスチンでは肝障害が、アナトキシンでは神経麻痺が急速に進みます。
「様子見」で1日待つのは非常に危険です。

Initiating treatment as early as possible after exposure to blue-green algae is critical.
There is no specific antidote for cyanotoxins, and treatment involves intensive, supportive care for patients experiencing shock or respiratory arrest.
(意訳)
生存率を高めるためにはできるだけ早く治療を開始することが極めて重要です。
シアノトキシンに対する特効薬はなく、症状に応じた支持療法しかありません。

https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/riney-canine-health-center/canine-health-information/blue-green-algae-poisoning-cyanobacteria-toxicosis

応急処置と受診時のポイント

中毒が疑われるときの対応は次のとおりです。

  • 即座に洗い流す(舐める前に)
  • 飲み水は必ず清潔な持参水のみ
  • 無理に吐かせない・自宅で薬を与えない

受診時にはつぎのような情報を準備しましょう。

  • どこの水辺だったか(場所や写真)
  • 泳いだ時間・症状が出たタイミング
  • 水や吐しゃ物が持ち込める場合は持参

「透明な水」「小さな流れ」も安心できない

2025年は全国的に猛暑と渇水が続き、川や湖の水温も高くなっています。
こうした状況は、まさにシアノバクテリアが繁殖しやすい環境です。

川や湖、水場へのお出かけの際は、現地の情報にも注意してください。

シアノバクテリア対策とは

シアノバクテリアは、目に見えない脅威です。
「透明だから」「匂わないから」「去年は大丈夫だったから」は通用しなくなります。

  • 危険のサインを知っておく
  • 少しでも不安なら、水に入れない勇気を持つ
  • 体に触れたら、すぐ洗って様子を見る
  • 何か変なら、すぐ動物病院へ連絡

万全ではありませんが、この4ステップで不要なリスクから愛犬を守れます。
今年の夏も、笑顔で帰れる水遊びにしましょう!

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