犬と猫に安全な水とは? 水道水の注意点と対策

日本の水道水は、世界的にも高い衛生基準を満たしています。
細菌やウイルスを防ぐために 塩素(次亜塩素酸ナトリウム) が加えられ、24時間体制で水質管理が行われています。
とはいえ、その安全性はあくまで人間を基準にしたもの。
体が小さく、代謝の異なる犬や猫にとって、本当に安心して飲ませられる水なのでしょうか?
水道水の塩素が抱える問題とは
塩素は、水中の病原菌を殺菌する役割を果たしていますが、一方でつぎのような問題点もあります。
- 塩素がペットの体に刺激を与える可能性
- 水中の有機物と反応してトリハロメタンやホルムアルデヒドなど有害物質が発生
- 塩素耐性のあるレジオネラ菌やクリプトスポリジウムへの対処は不十分
たとえば、WHOが規定した水質ガイドラインの残留塩素濃度5mg/L。
東京水道局を例に上げると、この水質ガイドラインよりさらに厳しい残留塩素濃度0.1mg-0.4/L以下を目標としています。
その上で「人に対して影響はありません」と明言していますが、残念ながら犬や猫にとっての安全性には触れられていません。
塩素とトリハロメタンは煮沸で減少できる?
「トリハロメタン」は、15分以上煮沸し続ければかなり減少させることができます。
ただし、15分以上沸騰させて塩素とトリハロメタンを取り除くと、今度は「傷みやすい普通の水」になってしまいます。
水道水で実際に起きた問題
また、塩素以外でも予期せぬ事故というのは避けられないものです。
ここからは実際の事例をみていきましょう。
PFAS(有機フッ素化合物)の検出
2023年から2024年にかけて、全国の複数地域で PFAS(ピーファス)という化学物質の検出 が報道されています。
これは消火剤や工業製品に使われる物質で、 長期間体内に残留し、発がん性の可能性も指摘 されています。
とくに注目されたのが、岡山県吉備中央町や岐阜県各務原市の事例。
血液検査の結果、住民の多くがアメリカ基準でリスクの高い値を超えていたことも明らかになりました。
https://www.env.go.jp/water/pfas/faq010.htmlhttps://www.env.go.jp/water/pfas/faq010.html
ホルムアルデヒドの混入
埼玉県の三郷浄水場では、塩素処理によってホルムアルデヒドという有害物質が生成される事故が発生。
これは有機物と塩素が反応した結果とされており、広範囲で水道水の供給が一時停止する事態となりました。
水道水に含まれるミネラルにも注意
さらに、 水道水に含まれるミネラルの含有量 にも注意が必要です。
硬水に含まれるカルシウムやマグネシウムは、 犬や猫にとって尿路結石のリスク を高める可能性があります。
https://petra.jp/877https://petra.jp/877
都道府県別ミネラル保有量とWHO分類
WHOの水質ガイドラインでは、硬度60mg/L未満を「軟水」、60から120mg/L未満を「中程度の軟水」、120から180mg/L未満を「硬水」、180mg/L以上を「非常な硬水」と分類しています。
軟水 | 中軟水 | 硬水 | 非常な硬水 |
---|---|---|---|
- 60mg/L | 60 - 120mg/L | 120 - 180mg/L | 180mg/L - |
2024年に行われた全国1564地点を対象とした 東京大学の研究では、関東地方や九州地方の一部の水道水で「中軟水」が確認 されています。
既に結石歴があるペット には、こうした日頃目に見えないミネラル管理にも注意が必要です。
貯水槽の管理状態も忘れずに
マンションやアパートなどの集合住宅では、貯水槽(タンク)を介して水が供給される ケースが多くあります。
いくら水道局が清潔な水を届けても、 貯水槽が汚れていれば意味がありません 。
動物や昆虫、は虫類が入り込んで死んだままになってしまうケースや、珍しい例ではありますが2013年、兵庫県で地元の高校生が貯水槽に侵入し、友人と泳いでいたとの報道もありました。
水道法で義務付けられている 有効容量が10トンを超える給水設備「簡易専用水道」 の清掃は年に1度。
ペットと水道水、どう向き合うか
日本の水道水は世界的に見ても高い安全性を誇り、コストパフォーマンスと安全性の面で非常に優れた選択肢です。
ただし、あくまでそれらが「人間基準の安全性」であることを忘れず、つぎのような工夫を取り入れることでより安心して使うことができます。
- 飲み水は 毎日新しく入れ替える
- 高齢・持病ありのペットには ミネラル量に配慮
- 心配な場合は 浄水器や煮沸(15分以上)を併用
- 貯水槽のある住居では 管理状況をチェック
もちろん、すべての手間を解消できるウォーターサーバー等を導入するのもいいでしょう。 大切なのは、「うちの子にとって本当に安心できる水環境とは何か?」を考え続けることです。
- 2025.06.24
- 2016.06.24