猫の発情期ガイド 犬との違いと避妊のタイミング

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猫の発情期は、飼い主にとっても猫自身にとっても大きな変化の時期。
あるときは夜中の鳴き声が増え、あるときはそわそわ落ち着かなくなったりしてしまいます。

今回は、そんな猫の発情期の仕組み、発情のある動物とない動物の違い、そして現代の猫の新たな発情期についてご紹介します。

猫の発情期サイクルと日照時間

*猫は季節繁殖動物(seasonally polyestrous)*と呼ばれます。
これは、日照時間が長くなる春から秋にかけて繁殖行動が活発になる動物を指します。

日本では一般的に3月〜9月ごろが発情期。
日照時間が短くなる冬には発情が止まり、休息期(無発情期)に入ります。

しかし、完全室内飼いの猫は照明の光を「太陽光」として認識します。
夜でも照明がついている環境では「日が長い=春」と脳が判断し、一年を通して発情期を迎えることもあります。

メス猫の発情周期と行動の特徴

メス猫の発情周期はおよそ次のように進みます。

  1. 発情前期(1〜2日)
    • 落ち着きがなくなり、オス猫を気にしはじめる
  2. 発情期(4〜10日)
    • 交尾可能な期間。鳴き声が大きくなり、尻尾を上げて腰を落とす「交尾姿勢」をとる
  3. 発情後期(数日〜2週間)
    • 交尾をしない場合、この期間が過ぎると再び発情を繰り返す
  4. 無発情期
    • 通常は冬場に訪れる休止期

発情期のメス猫は、大きな鳴き声、体を地面に擦りつける、甘えが強くなるといった行動を見せます。
これらはホルモンにより自然に引き起こされる繁殖サインであり、猫自身も制御できません。

猫の発情期は「交尾誘発排卵」

猫の発情の最大の特徴は、*交尾をきっかけに排卵が起こる「交尾誘発排卵動物」*であることです。

交尾をしなければ排卵が起きず、ホルモン値が下がらないため、数日後に再び発情期が訪れます。
このサイクルが2〜3週間ごとに繰り返されるため、交尾がない猫は「発情が終わらない」ように見えます。

交尾が行われた場合、24〜36時間ほどで排卵が起こり、妊娠が成立します。

犬の自然排卵と猫の交尾誘発排卵の違い

猫と同じく私たちにとって身近な犬は、同じ哺乳類でも発情の仕組みがまったく異なります。

特徴
排卵タイプ自然排卵交尾誘発排卵
発情周期約6〜8ヶ月に1回(年2回程度)約2〜3週間ごとに繰り返す
無発情期あり(休息期間が長い)交尾がなければ短期間で再発情
発情時期季節に関係なく周期的日照時間が長い時期に多い

犬は交尾の有無に関わらず排卵するため、自然に発情が終わり休止期に入ります。
一方の猫は、交尾がない限り排卵も休止期も訪れないため、発情を繰り返します。

発情期をコントロールするのは「光」と「メラトニン」

猫の体は非常に繊細で、発情期は主に光の量(日照時間)によってコントロールされています。
ここで重要な役割を果たすのが「メラトニン」というホルモンです。

メラトニンは暗い時間帯に多く分泌され、光周期(昼夜の長さ)を脳に伝える役割を担っています。
長い夜が続くとメラトニンの分泌量が増え、脳の視床下部では繁殖を促すホルモン(GnRH、LHなど)の分泌が抑制されます。
逆に、人工的な照明でも明るい環境が続くとメラトニン分泌が減り、繁殖ホルモンは過剰に分泌された状態になります。

つまり、夜も明るく室温も一定快適に保たれた現代の室内飼育環境は、猫の脳にとって発情せずにはいられない常春のような状態です。

発情を抑える唯一の確実な方法は「避妊手術」

このような発情の乱れを根本的に防ぐには、避妊手術が最も確実で安全です。
手術によって卵巣を摘出すれば、ホルモンの発生源がなくなり、発情行動は起きなくなります。

避妊手術のメリットはつぎの通りです。

  • 発情期の夜鳴きやストレス行動が消える
  • 子宮蓄膿症や乳腺腫瘍の予防になる
  • 健康寿命が延びる傾向がある

特に初回発情前(生後6ヶ月ごろ)に避妊を行うと、乳腺腫瘍の発症リスクを90%以上減らせるといわれています。

発情中の猫のケア方法

避妊をしていない猫が発情した場合は、つぎの点を意識してあげてください。

  • 灯りを消し、静かで暗い環境をつくる
  • 望まぬ妊娠を防ぐため、外に出さない
  • 優しく接してストレスを減らす
  • 温かい毛布や箱など安心できる空間を用意する

根本的な解決を望む場合は手術を検討するのが最善です。

「発情期がある動物」と「ない動物」の違いは?

動物の発情パターンは、生息環境と進化の過程で決まります。
発情期を持つ動物と、通年発情する動物にはつぎのような違いがあります。

  • 季節繁殖動物(猫、シカ、ヒツジなど)
    • 環境に合わせて、最も子育てに適した季節にのみ繁殖
    • 春に子どもを産めば、温暖で食糧が豊富な時期に成長できる
  • 通年発情動物(人間、犬、ブタなど)
    • 環境が安定しており、季節に左右されず繁殖できる
    • 社会的・文化的要素が行動に影響するケースも多い

つまり、発情期の有無は「種の生存戦略」の違いです。
寒冷地や乾燥地に適応した動物ほど季節繁殖型になり、熱帯や室内環境に適応した動物は通年発情型に進化します。

猫の発情期は「人工的な春」に起こる

猫の発情期は、自然界では春から秋に限られる季節的な現象。
しかし、現代の室内飼育では照明や温度管理の影響で、季節を問わず年中訪れるものになりました。

発情は本来、命をつなぐための大切な生理現象です。
ただ、現代の飼育環境ではそれがかえって猫にとって負担になってしまうこともあります。

だからこそ、発情の仕組みを正しく理解し、猫にとって最も快適な生き方を選ぶことが、私たち飼い主にできる最善のケアではないでしょうか。

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