飼い主の急な入院時のペットの行き先問題と松波総合病院の取り組み

入院中の景色の画像

突然の入院が決まったとき、真っ先に頭をよぎるのは「うちの子をどうしよう」という不安ではないでしょうか。

愛犬や愛猫は家族同然の存在です。
しかし、入院期間が長引いたり、家族や友人に預けられなかったりするとペットの生活にも大きな影響が出てしまいます。

最近では、こうした問題を解決するために、医療機関とペットの預かりサービスが連携する新しい仕組みが生まれています。
今回は、急な入院時にペットをどうすればいいのか、そして病院で始まった画期的な取り組みについてご紹介します。

急な入院時、犬や猫はどうすればいい?

入院が決まったときに最初に考えるべきは、ペットを安心して預けられる環境を確保することです。

最もスムーズなのは、家族や信頼できる友人に一時的な世話をお願いすること。
特に犬や猫は環境の変化に敏感なため、可能であれば自宅に通ってもらい、いつもの場所・匂いの中で過ごせるようにするのが理想的です。

しかし、どうしても身近に頼れる人がいない場合、つぎのような選択肢が考えられます。

  • 動物病院やペットホテルの一時預かりサービスを利用する
  • ペットシッターを呼ぶ
  • 里親や知人宅に預ける

入院期間が数日程度なら、動物病院やペットホテルの一時預かりサービスが便利です。
犬の場合は散歩や食事など、日常のリズムを保つ必要があるため、しっかりケアしてくれる施設を選びましょう。

猫の場合は環境の変化が大きなストレスになるため、自宅にペットシッターを呼ぶ方が向いているケースが多いです。
長期入院になるなら、一時的な里親や知人宅に預けることも視野に入れた方がいいでしょう。

入院直前のバタバタを避けるためにも、普段からペットのフードやおやつの種類、病歴や持病、かかりつけの動物病院の情報をメモしておくと安心です。
特に持病や薬がある場合は、必ず預け先に伝える必要があります。

さらに、万が一の事態に備え、ペット保険や後見人制度などを検討しておくと、飼い主が動けない状況でも適切なケアが続けられます。

飼い主の不安を減らす「病院×ペット預かり」の新しい取り組み

こうしたペット問題の解決に向け、2025年4月に岐阜県でスタートしたのが、*松波総合病院の「ペットおあずかりセンター」*です。

これは、入院患者さんがペットを安心して預けられるように病院敷地内に専用の施設を設置した、日本初の取り組みです。

従来、飼い主が入院するとペットの世話ができず、入院や治療をためらうケースが多く見られました。
この仕組みでは、急性期治療や診断の間、ペットを同じ病院敷地内で預かってもらえるため自宅に残してしまう不安を解消できるのが大きなメリットです。

しかも、入院中でも医師の許可さえあれば毎日ペットと面会ができるのです。
ペットに会えることで飼い主の精神的な安心感が高まり、ストレスや痛みの軽減、さらには回復促進につながる可能性があると期待されています。

ペットと同じ病室で入院できる「ウィズペット病棟」

さらに画期的なのが、松波総合病院での急性期治療が終わった後、海津市医師会病院に転院すると、ペットと同じ病室で過ごせる「ウィズペット病棟」に入れること。

この病棟では、飼い主と愛犬が同じ部屋で生活できるだけでなく、敷地内のドッグランも利用可能です。
つまり、病気の治療を続けながら、いつも通りペットと一緒の暮らしを保てます。

ただし、現時点では対象が犬のみで、猫など他の動物は対象外
今後のニーズや実績によって拡大する可能性はありますが、現段階で犬に限定されている点は注意が必要です。

ペットとの入院がもたらすメリット

この「ペットおあずかりセンター」と「ウィズペット病棟」の仕組みには、飼い主とペット双方にとって大きなメリットがあります。

まず、飼い主が安心して治療に専念できること。
ペットの世話をどうするかという不安を抱えたままでは、治療の決断が遅れたり、入院そのものを断念してしまうケースもありました。
預け先が確保され、しかも入院中でも面会できるとなれば、心の負担は大幅に軽減されます。

さらに、ペットとの触れ合いはストレスや痛みの緩和に役立ち、回復を早める効果が期待できるとされています。
実際、動物との接触が精神面に与えるポジティブな影響は、アニマルセラピーの分野でも研究が進んでいます。

また、こうした取り組みが全国に広がれば、今後ペットを理由に治療をためらう人が減り、医療の受けやすさは向上するでしょう。
飼い主だけでなく、ペットも安心して暮らせる環境が整えば、双方のQOL(生活の質)が向上することは間違いありません。

ペットと飼い主が共に安心できる社会へ

ペットは家族であり、心の支えでもあります。
だからこそ、飼い主が病気になったときにペットの存在が負担になるのではなく、むしろ支えや希望になる社会の仕組みが強く求められています

松波総合病院の「ペットおあずかりセンター」と「ウィズペット病棟」は、まさにその第一歩といえる取り組みです。
まだ一部の地域限定ではありますが、このような仕組みが全国に広がれば、誰もが安心して医療を受けられる未来に近づきます。

急な入院は誰にでも起こり得ること。
もしものときに慌てないためにも、今のうちからペットの預け先を考えておくと同時に、こうした新しい取り組みに注目しておくことが重要です。

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