鵺の正体はレッサーパンダ? 世界のキメラに秘められた真実に迫る

浮世絵師 歌川国芳による木曽街道六十九次之内 京都 鵺 大尾の画像

夜な夜な「ヒョーヒョー」という不気味な声が聞こえたら、その正体は伝承の怪物 鵺(ぬえ) かも知れません。
現代においては鵺の正体をめぐってはさまざまな説があがり、近年では表題のとおり まさかのレッサーパンダ説 まで浮上しました。

今回は鵺の正体、さらには世界中に伝わる キメラ的な伝承生物たち について、最新の知見とロマンを交えて深掘りします。

鵺の正体はレッサーパンダ?

2003年、新潟県長岡市の地層から発見されたのは、約350万年前のレッサーパンダ属の化石。 その化石は 現生のレッサーパンダよりも約1.5倍大きい 個体とされ、現在では絶滅してしまった種に属するそう。

この発見をきっかけに「もしかして鵺の正体はレッサーパンダでは?」という説が生まれました。

鵺といえば、

  • 猿の頭
  • 狸の体
  • 虎の手足
  • ヘビやキツネのような尾
  • 夜行性で木の上にいる

これら平安時代から語られる鵺の描写はレッサーパンダと意外なほど一致します。

木の上のレッサーパンダ

この仮説は古生物学者の荻野氏が提唱し、JR東日本の車内誌「トランヴェール」でも紹介され話題となりました。

鵺の正体はトラツグミ?

一方で、もっとも古くから語られている鵺の正体が トラツグミ です。

トラツグミ(虎鶫)

  • 夕方から夜にかけて「ヒョー、ヒョー」とうめき声やこどもの鳴き声にも似た悲しげな声で鳴く
  • 山の中から聞こえ、姿が見えない
  • 声を聞いたあとに災厄が起こるとされ、不吉の象徴に

つまり、 鵺とは「声・音の怪異」であり、正体が見えないからこそ恐ろしい存在 だったのです。 この「見えない恐怖」こそが「猿の顔、虎の手足、蛇の尾」といった キメラ的ビジュアルに発展した と考えられます。

なお、この奇妙な一致からこの鳥は「虎鶫(トラツグミ)」と名付けられました。

世界のキメラ

鵺のように、 さまざまな動物のパーツを組み合わせた「キメラ型の生物」 は、世界中の神話や伝説に登場します。

龍(中国・日本)

  • ラクダの頭
  • 鹿の角
  • 蛇の体
  • 魚の鱗
  • ワシの爪

干支でもおなじみの龍も、特徴だけをみれば立派なキメラ。 雨を呼ぶ神として崇められ、 自然界の力の象徴 とされています。

水面から顔を覗かせるカバ

かつて、サイやカバのようなまだ見ぬ異国の動物の噂に尾ひれがつき、「龍」という生物がイメージされたという説もあります。 当時、動物園はおろか図鑑もないような状態だと、そういった誤解も無理もなかったのかも知れません。

カバといえばバハムートの元ネタもカバだったような?

麒麟(中国)

  • 鹿の体
  • 魚の鱗
  • 牛の尾
  • 馬の蹄

日本では「キリンビール」でおなじみ 平和と知恵の象徴 麒麟。

草原のキリン

明治時代、初めてキリンが日本に輸入された頃は漢字表記で同一視されていたのだとか。

獏(中国・日本)

  • 象の鼻
  • サイの目
  • トラの足
  • 牛の尾
  • 熊の体

日本では「悪夢を食べる」とも言われる魔除けの霊獣。

草原のアフリカバク

実在の動物アフリカバクやマレーバクは、後世の混同による命名だとか。

グリフィン(中東~欧州)

  • ワシの上半身
  • ライオンの下半身

ハリー・ポッターでおなじみのグリフィンは、天と地の力を併せ持つ 王権や財宝の守護者

かつてモンゴルのゴビ砂漠で見つかった立派な体にくちばしを持つ恐竜「プロトケラトプス」の化石から想像されたという説が有力です。

プロトケラトプスの横顔

やや話はそれますが、なんの事前知識もなしに象の頭の骨をみたら、疑うことなくサイクロプスの存在を信じてしまいそうです。

ユニコーン(ヨーロッパ)

  • 馬の体
  • 1本の角

人間を避け、清らかで触れがたい存在として知られる純白のユニコーン。

自然の中のサイ

元は「サイ」という動物を伝言ゲームで伝える中で、その姿が変化したという説が有力だそう。

後に実在が判明したキメラたち

伝説上の生き物の中には、かつて「存在しない」と思われていたものの のちに実在が確認されたケース もあります。

オカピ

  • 馬の体
  • シマウマの手足

20世紀初頭にアフリカで発見されるまで幻の動物とされていたそう。

佇むオカピ

ダイオウイカ

暗闇に潜むイカ

体長10メートルを超える個体さえ確認されているというダイオウイカは、かつて「クラーケン」という海の怪物として恐れられました。

カバゴン

日本の漁船がニュージーランド沖合を航行中に目撃されたという、頭部だけで1.5メートルほどの海の巨人。 その正体はアシカやアザラシなどの海獣だったのではないかと言われています。

水面に漂うアザラシ

下記の記事はそのものずばりな写真が掲載されていたためご紹介させていただきます。

想像と現実の狭間に

ある意味では実在し、ある意味では実在しないそんな不確かな存在たち。 その背景には、常に未知への恐怖、そして底しれぬ人間の想像力と知的好奇心があります。

現代では解明されていないさまざまな存在もいつの日か解き明かされ、見当外れな私たちの想像が笑い話になるのかも知れません。

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