柴犬の歴史! 縄文から世界へ羽ばたいた日本犬の物語

世界中で愛される、日本を代表する犬種「柴犬」。
小柄でキリッとした顔立ちにピンと立った耳、くるんと巻いたしっぽ。
どこか野性的で誇り高く、それでいて愛嬌があり飼い主には忠実。これで愛されないわけがありません。
そんな愛すべき柴犬、実は1万年以上もの歴史を持つ犬種です。
今回は、縄文時代から続く柴犬の歴史とその魅力を紐解いていきます。
縄文時代にさかのぼる柴犬の起源
遡ること1万年、 縄文時代 。 縄文時代の遺跡からは犬と暮らしていた痕跡が数多く見つかっており、当時の人びとが犬とともに狩猟や番をしていたことがわかっています。
特に 縄文犬(じょうもんけん)と呼ばれる小型犬 の骨格は現代の柴犬と非常によく似ているといわれています。
- 三角形の立ち耳
- くるんと巻いたしっぽ
- 小柄で引き締まった体つき
これら縄文犬の特徴はまさに現在の柴犬そのもの。
まさに柴犬は 日本人の暮らしとともに育ってきた犬 であることがうかがえます。
山岳地帯で活躍した猟犬としての柴犬
縄文時代以降も、柴犬は日本各地の山岳地帯を中心に暮らしていました。
特に信州(長野県)、美濃(岐阜県)、山陰(鳥取・島根県)などでは、地域ごとの特徴を持つ柴犬が自然発生的に生まれていました。
- 信州柴
- 骨太でがっしりとした体格。現在の柴犬の主流
- 美濃柴
- 赤毛が非常に濃く、野性味あふれる外見。現在は絶滅状態
- 山陰柴
- 比較的小柄で面長、耳が大きめ。警戒心が強く独立心がある
これらの柴犬たちは、主に 猟犬として山野を駆け、小動物を追い、猟師をサポートするパートナー として重宝されたのです。
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現代の柴犬が見せる鋭い観察力や俊敏な動き、警戒心の強さはこうした猟犬としての歴史の名残でもあります。
洋犬との交雑による危機と保存活動の始まり
しかし、明治時代に入り 西洋犬の輸入が急増 すると在来の柴犬たちは大きな危機に直面します。
都市部では洋犬との交配が進み 純粋な柴犬の血統が失われつつあった のです。
この状況を憂いた愛犬家たちが立ち上がり、柴犬をはじめとする日本犬の保存運動が始まりました。
そして、1936年(昭和11年)、ついに 柴犬は「国の天然記念物」に指定 されます。
ここからさらに、
- 日本犬保存会の設立
- 犬種の標準化(スタンダード化)
- 繁殖・血統管理の徹底
といった流れを加速させていきます。
この時スタンダートとされたのが信州系統の柴犬。
現在の柴犬の多くはこの信州柴をベースに作り上げられています。
戦争による壊滅的打撃と復活の軌跡
そして1941年、太平洋戦争では再び柴犬は危機に直面します。
空襲や食糧難の中で多くの柴犬が命を落としました。
さらに、狂犬病の流行を防がんとする行政により、 強制的に処分されてしまう柴犬も少なくなかった のです。
この時 美濃柴や山陰柴などの在来系統は絶滅状態 となり、辛うじて生き残った個体をもとに戦後の繁殖が再スタートされました。 私たちが見ている柴犬は、 戦争という過酷な時代を生き延びた数少ない血統の子孫 ということになります。
都市部で愛される家庭犬へ
戦後の復興とともに柴犬の存在も再び注目を集めるようになります。
昭和40年代以降、日本人の生活様式が変化する中で柴犬は 番犬から家庭犬へ と役割をシフトしていきました。
- 無駄吠えが少ない
- 留守番ができる
- 頭が良くしつけやすい
- 体が丈夫で病気に強い
こうした特性から、柴犬は「日本の家庭にぴったりな犬」として受け入れられていきます。
また、
- 黒柴
- 胡麻柴
- 白柴
- 長毛柴
など色や毛質のバリエーションが広まったのもこの時代です。
個性を重視する飼い主が増えた ことで、こうした見た目の多様性も柴犬人気の一因となりました。
世界へ羽ばたいたShiba Inuの現在
21世紀に入ると、柴犬は「 Shiba Inu 」として世界中で人気の犬種になります。 特にアメリカやヨーロッパではその可愛らしい見た目と気品のある立ち振る舞いが評価され、SNSやミーム文化で火がつきました。
- 「Doge(ドージ)」のインターネットミームで話題に
- InstagramやTikTokでの柴犬動画のバズ
- Shiba Inuをモチーフにした仮想通貨「SHIB」の登場
こうして、柴犬は「 クールな日本文化の象徴 」として世界中の人々の心をつかんだのです。
柴犬の未来
柴犬は 日本の自然や文化とともに育ってきた、貴重な日本固有の在来犬種 。 そして、長い歴史をともに歩んできた誇るべきパートナーでもあります。
これからも私たち日本人の良き隣人として、遠い未来まで関係を守っていきたいですね。
- 2025.05.14