犬がカタツムリを食べる!? 症状と寄生虫のリスク

カタツムリと犬の画像

梅雨の季節を迎え、ふと見かけることも増えてきたカタツムリ。
散歩の途中や庭先で、愛犬がうっかりカタツムリやナメクジをパクリ……。

一見すると些細な出来事に思えるかもしれませんが、実は注意が必要です。

今回は、カタツムリ・ナメクジが愛犬や私たち人間にもたらす寄生虫のリスクや予防法についてご紹介します。

犬がカタツムリやナメクジを食べてしまったときの初期症状

カタツムリの殻は主にカルシウムで構成されており、消化管内で物理的刺激となってつぎのような症状を引き起こします。

  • 嘔吐
  • 軟便や下痢
  • 食欲不振

これらの症状はあくまで一時的なもので、多くの場合では軽度で済みます。
また、一時的な絶食や胃粘膜保護剤の投与によって改善することが一般的です。

ただし、 症状が長引いたり、繰り返し吐くような場合 は、獣医師の診察を受けたほうが安心です。

もっと怖い寄生虫「広東住血線虫症」

消化器系のトラブルとは別に、カタツムリやナメクジを食べた犬に特に注意が必要なのが 寄生虫による感染症 です。
その中でも、日本国内で近年報告が増えているのが 「広東住血線虫(こうとうじゅうけつせんちゅう)」による広東住血線虫症 です。

本来はネズミを終宿主とする寄生虫ですが、犬が誤って中間宿主である カタツムリやナメクジ を摂取することで感染が成立する場合があります。

感染の流れ

  1. 犬がカタツムリやナメクジを摂取する
  2. 中間宿主内にいた広東住血線虫の幼虫が犬の体内に取り込まれる
  3. 幼虫が中枢神経系(脳や脊髄)へ移動し、 炎症や神経症状 を引き起こす

広東住血線虫は、犬の体内では成虫にまで成熟しないことがほとんどですが、幼虫のまま中枢神経に入り込み、 脳や脊髄で炎症を引き起こすことがある ため非常に注意が必要です。

広東住血線虫症の分布と感染リスク

這うアフリカマイマイ

公益社団法人日本獣医師会によると、 沖縄県をはじめ、本州の一部地域(静岡・神奈川・東京・大阪など)でも、広東住血線虫に感染した野生ラットや中間宿主が確認 されており、アフリカマイマイやナメクジを介した感染が報告されています。
また、 温暖化や生態系の変化、物流の活発化により、今後さらに分布が広がる可能性も指摘されています

なお、この寄生虫は 稀ではあるものの、人にも感染する「人獣共通感染症」であり、感染した場合は髄膜脳炎などの重篤な神経症状を引き起こす可能性があります
特に、 日本国内でも本土での感染例が報告されているほか、東南アジアやハワイなどの流行地でも注意が必要 です。

広東住血線虫症の症状と重症化のリスク

犬が広東住血線虫症に感染すると、つぎのような 神経系の異常が現れる ことがあります。

  • 歩行のふらつき
  • 後ろ足の麻痺
  • 頭を傾ける、首をかしげる
  • 痛みへの過敏反応
  • けいれん、昏睡などの中枢神経症状

これらの症状は 寄生虫による脳や脊髄の炎症反応 によって引き起こされます。
放置すると 回復困難な神経障害や最悪の場合、死亡に至る可能性もある ため、早期の対応が極めて重要です。

広東住血線虫症の診断方法と治療

広東住血線虫症の診断は、つぎのような手法が用いられます。

  • 臨床症状からの推察
  • 脳脊髄液(髄液)の検査
  • 血液検査での好酸球増加の確認
  • 画像診断(MRIやCT)による脳の炎症の評価

現時点でこの寄生虫に対する特異的な治療薬は存在しません。
そのため、治療は主に 症状の緩和と免疫反応の抑制(ステロイドなど) が中心になります。
また、感染初期であれば駆虫薬が投与されることもありますが、 過度な炎症を引き起こすリスク があるため、獣医師の慎重な判断が求められます。

予防のためにできること

広東住血線虫症を予防するためには、 犬がカタツムリやナメクジを口にしないよう環境管理と行動制御を徹底する ことが最も重要です。

  • 雨上がりの地面を嗅がせない
  • ナメクジが発生しやすい場所(落ち葉の下、石の陰など)に近づけない
  • 散歩中はリードを短く持ち、拾い食いを防ぐ
  • 「待て」ができる

本当は怖いカタツムリ・ナメクジ

カタツムリやナメクジの誤食は、 神経症状を引き起こす広東住血線虫症につながる可能性 があります。
この疾患は 犬だけでなく人にも感染することがある ため、社会的にも注意すべき重要な寄生虫感染症です。

日々からお散歩のルートをよく観察して、目を離さないことが愛犬の命を守る大きな力になります。

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