絶滅危惧種ツシマヤマネコとは? 対馬のベンガル系ヤマネコ

ツシマヤマネコとは、 長崎県・対馬に生息する日本固有の野生のネコ科動物 です。
姿かたちはよく見るイエネコに似ていますが、その生態や背景を知るとまったく異なる存在であることがわかります。
現在、この ツシマヤマネコは絶滅の危機 に直面しており、保護活動が急務となっています。
今回は、その生態、脅威、保護の現状、そして私たちが日常のなかでできる支援についてご紹介します。
ツシマヤマネコとは?
ツシマヤマネコは、アジアに広く分布するベンガルヤマネコの亜種で 日本では対馬のみに生息しています 。
体長は約50〜60cm、体重は3〜5kgほど。
イエネコよりがっしりしており、 丸く大きな耳や短く太い尾、全身の斑点模様 などが特徴です。
主に夜間に活動し、森や川沿いなど自然の多い場所を好んで単独で生活します。
絶滅危惧IA類に指定
環境省のレッドリストでは、 ツシマヤマネコは最も絶滅に近い「絶滅危惧IA類(CR)」に分類されています 。
これは「ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い」と判断されるた分類で、野生の推定個体数はわずか100頭前後*と目されています。
ツシマヤマネコが直面する脅威
ツシマヤマネコの個体数が減少した要因はいくつかあります。
交通事故
道路の整備と車の普及により、交通事故で命を落とすツシマヤマネコが増えています。
夜行性である彼らは、暗闇の中で車に気づかず事故に遭ってしまうことが少なくありません。
イエネコとの交雑・感染症
人間に飼われている イエネコや野良猫との接触は、ツシマヤマネコにとって病気の感染リスクを高めます 。
特に、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫エイズウイルス(FIV)は、ツシマヤマネコにとって命取り。
また、交雑が進むと 遺伝的な純血性の保持が困難 になるという問題も起こります。
生息地の減少と分断
森林の開発や農地化、住宅地の拡大によって ツシマヤマネコたちの住む場所が失われたり分断される ケースもあります。
移動ルートを失った結果、繁殖の機会を逃してしまうケースも増え、個体数の減少に拍車をかけています。
その他の日本固有の絶滅危惧種
ツシマヤマネコのように 日本固有の絶滅危惧種 として知られる動物は他にも存在します。
たとえば 西表島に生息する「イリオモテヤマネコ」 は推定個体数100頭未満と、ツシマヤマネコ同様に深刻な状況です。
また、 奄美大島や徳之島に分布する「アマミノクロウサギ」や北海道の高山地帯に暮らす「エゾナキウサギ」 も絶滅の危機にある哺乳類として知られています。
ツシマヤマネコに会うには?
ツシマヤマネコは現在、国内のいくつかの動物園や保護施設で飼育されています。
- 東山動植物園(愛知県名古屋市)
- 井の頭自然文化園(東京都三鷹市)
- 沖縄こどもの国(沖縄県沖縄市)
- 那須どうぶつ王国(栃木県那須郡那須町)
- 福岡市動物園(福岡県福岡市)
ただし、繁殖や健康管理のために非公開となっていることも多いため、公開状況は施設によって異なります。
おわりに
ツシマヤマネコは、日本にしか生息しない希少な野生動物。
その数が急激に減ってしまった背景には、高度経済成長期以降の開発など私たち人間の影響は否定できません。
ツシマヤマネコの現状は、人と自然との関係をもう一度考えるきっかけにもなります。
一度絶滅してしまえば二度と取り戻すことはできない ことを心に留め、よりよい未来を迎えるための選択を心がけたいですね。
- 2025.05.09