馬インフルエンザとは? 人への影響と予防策

先日、熊本県で国内17年ぶりの馬インフルエンザの発生がニュースとなり、話題を集めました。 結論からいうと、馬インフルエンザは鳥インフルエンザなどとは、違い私たち人や猫に感染することはありません。
また、感染した馬の命まで脅かすことは少ないため、そういった意味ではやや安心材料といえるかもしれません。
ただ、特に経済面では大きな影響が予想されます。
この機会に「馬インフルエンザ」という聞き慣れない病気について知っておきましょう。
馬インフルエンザとは?
馬インフルエンザは、馬に感染する インフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症 。
「馬の風邪」とも呼ばれますが、その症状は私たちに馴染みのある「インフルエンザ」とほぼ同様で、決して軽視はできません。
代表的な症状には、高熱、激しい咳、鼻水、そして食欲の低下などがあります。
なかには動くのを嫌がるようになる馬や ぐったりした様子を見せる馬 も現れます。
発症のタイミングは、感染から 1〜3日以内 とされていて、やはり進行が早いのも特徴です。
特に若い馬や免疫が弱い個体では重症化しやすく、 早期発見と対処がとても重要 です。
ちなみに馬の平均寿命は25〜30年程度。
この長い一生の中で、感染症へのリスクは何度もやってきます。
だからこそ、日頃からの健康管理が重要です。
感染経路と拡大リスク
馬インフルエンザは、主に 飛沫感染や接触感染 で広がります。
感染した馬の咳や鼻水に含まれるウイルスが空気中に漂い、それを吸い込んだ他の馬が感染します。
厄介なのはやはりインフルエンザ、 非常に感染力が強い という点です。
ひとつの厩舎で感染が始まると、瞬く間に全頭に広がってしまうこともあります。
換気の悪い環境や、共用の餌入れ、水桶、ブラシ なども感染源になる可能性があります。
集団飼育の現場では、ひとつの油断が大きなアウトブレイクにつながりかねません。
治療と予防方法
馬インフルエンザの治療に ウイルスそのものを退治する薬はなく、対症療法が中心になります 。
具体的には、解熱剤や抗炎症薬の投与で苦痛を和らげ、十分な安静を確保します。
回復には通常 1〜2週間 ほどかかりますが、重症化した場合はさらに長引くこともあります。
対策としてもっとも有効なのは、 予防ワクチンの接種 です。
約17年前、2007年に全国的に数百頭が馬インフルエンザに感染した際も競馬施設や乗馬クラブへの影響は凄まじく、徹底した対策マニュアルや感染拡大の防止策が生み出されました。
現在でも多くの競馬施設や乗馬クラブでは、定期的なワクチン接種が義務化されています。
ただし、ワクチンを打っていても感染することはありますし、17年の年月を経てウイルスの変異やワクチンの効果低下は起こり得ます。
ワクチン接種とあわせて、こまめな体温チェックや隔離対策も予防には欠かせません。
人や他の動物への感染は?
馬インフルエンザは、現在のところ人間には感染しないとされています。
いわゆる人獣共通感染症ではないため、人が直接病気になる心配はありません。
ただし、 人間の衣服や手を介して別の馬にウイルスが広がること はあります。
たとえば、感染馬の世話をした後に別の厩舎へ移動すると、無意識のうちにウイルスを運んでしまう可能性があります。
また、犬や猫といった他のペットに感染する例も確認されていませんが、引き続き衛生管理には気を配りましょう。
社会への影響は?
たとえば、鳥インフルエンザでは養鶏業への深刻な打撃、そこからの卵や鶏肉の価格高騰など、私たちの生活にも深刻な影響を及ぼしました。
そして、 馬インフルエンザはスポーツ界にも大きな影響 を及ぼす病気です。
2007年の馬インフルエンザ流行の際は、JRA(日本中央競馬会)の全レースが一時中止になり、 経済的損失は数十億円規模 とも言われました。
また、乗馬クラブでも感染が出れば、営業を一時停止せざるを得ません。
馬とのふれあいイベントが中止になるなど、 地域社会への影響 も少なくありません。
今後も馬インフルエンザの影響については、注視が必要です。
馬インフルエンザから馬を守るために
馬インフルエンザは私たちの身近な場所にも影響を与える可能性のある感染症です。
観光牧場でのふれあいイベントや、乗馬体験、競馬の開催にも関係してきます。
施設を訪れるときは、感染拡大を防ぐためのルールにきちんと従うこと。
また、もしあなたが定期的に乗馬クラブに通っているなら、クラブの衛生対策がきちんとしているかどうかをチェックしてみましょう。
馬の体調に変化があるときには無理に乗らず、スタッフに気づきを共有することも大切です。
こまめな消毒や馬との距離を保つルール、動物との接触後の手洗いなど、ひとりひとりの行動が馬たちを守る一歩になります。
- Updated on 2025.04.23
- published on 2025.04.22