室内と屋外、猫はどちらが幸せ? 飼い主が知っておくべきこと

看板の陰から覗く野良猫の画像

猫を飼っていると一度は考えてしまう「猫は外に出してあげた方がいいのかな?」という疑問。
実際、日本では完全室内飼いが推奨されつつも、まだまだ屋外に出ている猫も多く見かけます。

では、本当に猫にとって幸せなのはどちらでしょうか。

今回は、「室内猫」と「屋外猫」それぞれの生活を客観的に比較しながら、猫の健康・安全・精神的な充足という観点からご紹介していきます。

健康状態に大きな差が出る室内飼いと屋外飼い

まず注目したいのは、猫の健康と寿命に関わるポイントです。

猫は自分の縄張りをとても大切にする動物で、窓の外に見える景色も自分の縄張りの一部だと感じています。
そのため、「外に出たい」という気持ちを抱くのはごく自然なことです。

屋外に出ることで一時的にストレスが解消されたり、退屈からくる問題行動(家具での爪とぎ、噛み癖など)が減ったりすることは確かにあります。

しかし、そうしたメリット以上にリスクの大きさが問題となります。

屋外に出る猫が直面するリスク

屋外で暮らす猫たちは、常にさまざまな危険にさらされています

たとえば、交通事故はもっとも多い死因のひとつ。
車やバイク、自転車との接触事故は一瞬で命を奪うことも珍しくありません。

また、感染症のリスクも深刻です。
ほかの猫との喧嘩や接触を通じて、猫エイズ(FIV)や猫白血病(FeLV)など、命に関わるウイルスに感染してしまう可能性があります。
ノミやダニ、寄生虫の感染も屋外猫によく見られる特徴です。

さらに、喧嘩による怪我も少なくありません。
傷口が化膿したり、そこから感染症が広がったりすることもあります。
加えて、 カラスやタヌキなどの野生動物に襲われるリスク も無視できません。

また、地域によっては環境要因も健康を左右します。
夏の猛暑、冬の寒さ、大雨や台風など、過酷な自然環境は猫の体力を奪い、病気や怪我にも繋がります。

その他に、誤飲や中毒の危険性もあります。
ゴミをあさったり、有毒な植物や化学物質に触れたりすることで、そのまま命を落としてしまうことも少なくありません。

完全な野良猫の場合や迷子になってしまった場合、常に食料を探し回る生活を強いられます。
安定して栄養のある食事を取れない猫は、免疫力が下がり病気にかかりやすくなってしまいます。

室内飼いの猫にもリスクが?

一方で、 完全室内飼いにリスクはあります

それは、運動不足になりやすいということ。
スペースが限られている室内では、 猫が十分に体を動かせないことが多く、肥満や糖尿病、関節炎、心臓病といった生活習慣病に繋がりやすくなります

しかしこれらは、飼い主の工夫次第で防ぐことが可能です。

キャットタワーを設置したり、おもちゃで遊んであげたり、フードをパズル状の容器に入れて「狩りごっこ」を演出したりすれば、一定の運動量は確保できます。
最近では「猫用知育トイ」なども登場していて、室内でも猫が飽きずに遊べる環境づくりが可能になってきました。

室内飼い、屋外飼いの寿命の差は?

屋外に出る猫は、室内猫よりも寿命が短い傾向があります

一般社団法人ペットフード協会が実施した令和6年(2024年)の調査によると、 完全室内飼いの猫の平均寿命は約16.34年
一方で、 屋外に出ることがある猫は約14.24年 と、約2年以上の差が見られました。

この差は、人間に換算すれば10年以上の差とも言われています。
少しでも長く愛猫と過ごしたいと願うなら、この差を無視するわけにはいきません。

外に出すなら最低限の安全対策を

それでも外に出さざるを得ないケースもあるかも知れません。
その場合は、せめてリスクを最小限に抑える対策をしましょう。

まず、マイクロチップの装着は必須です。
2022年からペット販売業者には義務化されました が、一般の飼い主にも推奨されています。
もし迷子になったとき、身元の特定に大きく役立ちます。

次に、ノミ・ダニの予防薬を定期的に使用すること。
これは 屋外猫にとって命綱のような存在 です。

予防接種も欠かさず行いましょう。
特にFIVやFeLVなどは、一度感染してしまうと完治することはありません。

また、 夜間や悪天候の日だけでも室内に入れてあげると、事故や体調悪化のリスクは大幅に減ります

定期的に健康診断を受けることも重要です。

可能であれば、「猫用ハーネス」や「キャットウォークのあるベランダ」など、半屋外的な空間で猫が安全に外を楽しめるよう工夫するのも良いでしょう。

猫の幸せは自由と愛情のはざま

一部の人々は、 猫を屋外に出すことが彼らの幸せだと考えています
しかし、命の安全を第一に考えるなら、やはり 室内飼いが猫にとって理想的 です。

それでも外に出すという場合は、 安全対策を万全に整える ことが欠かせません。

猫と末永く、心地よく暮らしていくために、今一度、あなたと愛猫の生活環境を見直してみましょう。

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